2009-01-01から1年間の記事一覧

過ちの償い方……『グラン・トリノ』(2008年、アメリカ)

2008年 アメリカ 監督・主演=クリント・イーストウッド 出演=ビー・バン アーニー・ハー クリント・イーストウッドの近作は、決して「泣ける」映画では決してない。俳優の顔ぶれも地味で、派手なアクションもない。それでいて、見終わったらずしりと重いも…

極限状態で自分らしくあるということ……『硫黄島からの手紙』(2006年、アメリカ)

2006年 アメリカ 監督=クリント・イーストウッド 出演=渡辺謙 二宮和也映画の最低条件の一つは「それらしく見えること」だと思う。その意味で、アメリカ人のクリント・イーストウッドが日本人キャストで製作した『硫黄島からの手紙』は十分賞賛に値する。 …

67歳の宮崎駿から17歳の宮崎駿への手紙……『崖の上のポニョ』(2008年、スタジオジブリ)『白蛇伝』(1958年、東映動画)

崖の上のポニョ 2008年 スタジオジブリ 脚本・監督=宮崎駿 声の出演=奈良柚莉愛/土井洋輝/山口智子白蛇伝 1958年 東映 脚本・監督=藪下泰司 声の出演=森繁久弥/宮城まり子ぼくは、劇場公開された宮崎駿の作品は全部見ている。彼がスタッフとして関わ…

父親が娘にしてやれること……『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年、アメリカ)

2004年 アメリカ 監督=クリント・イーストウッド 出演=クリント・イーストウッド/ヒラリー・スワンク/モーガン・フリーマン 「俺にボクシングを習いたいのなら、まず言っておくことがある」 白髪の老トレーナーは、彼のもとに飛び込んできた娘に言い渡す…

平凡人の偉大さ……『コーラス』(2004年、フランス)

2004年 フランス 監督・脚本・音楽=クリストフ・バラティエ 出演=ジェラール・ジュニョ/ジャン=バティスト・モニエ一人の教師の情熱と指導によって、不良少年たちが成長していく。そういう物語が、今の日本人は大好きだ。ちょっと前だと仲間由紀恵の「ご…

原節子 あるいは1936年のクラリス姫……『河内山宗俊』(1936年、日本)

1938年 PCL 監督=山中貞雄 出演=河原崎長十郎/中村翫右衛門/山岸しづ江/原節子今までみた女優のなかで、いちばん素敵だったのは? と聞かれると、「河内山宗俊の原節子」と答えることにしている。そんな昔の映画を見たことがある人は滅多にいないか…

オリンピックの美と官能……『民族の祭典・美の祭典』(1938年、ドイツ)

1938年 ドイツ 監督=レニ・リーフェンシュタール最近、『レニ・リーフェンシュタールの嘘と真実』という本を読んだ。「真実と嘘」ではなく「嘘と真実」という邦題が、あらゆる意味で20世紀を代表する女性芸術家の生涯のある面を表しているようでおかしい(…

1957年 新東宝 監督=渡辺邦男 出演=嵐寛寿郎/田崎潤/林寛/高島忠夫/宇津井健/丹波哲郎/藤田進/若山富三郎 戦前日本において、戦争というのは国民にとって、ワールドカップやオリンピックのようなものだったんじゃないだろうかということを考えさせ…

戦争がスポーツだった時代の残像……『明治天皇と日露大戦争』(1957年、日本)

ケイト・ウィンスレットの母なる肉体……『レボリューショナリー・ロード』(2008年、米・英)

2008年 アメリカ・イギリス 監督=サム・メンデス 出演=レオナルド・ディカプリオ/ケイト・ウィンスレットケイト・ウィンスレットが23歳のとき主演した「グッバイ・モロッコ」(1998年)という映画がある。二人の小さな子どもをつれ、北アフリカのモロッコ…

1960年 新東宝 監督=小森白 出演=天知茂/北沢典子/細川敏夫/沼田曜一 「関東大震災直後の朝鮮人虐殺」「大杉栄虐殺」を描いた日本映画というだけでも貴重な一作。たぶん、今後も二度と作られることはないだろう。 主役は天知茂。テレビドラマ「非常のラ…

テロリストの精神世界……『大虐殺』(1960年、日本)

1960年 新東宝 監督=小森白 出演=嵐寛寿郎/三ツ矢歌子/宇津井健/天知茂/菅原文太 昭和天皇を主役とした映画といえば、ロシア人のアレクサンドル・ソクーロフ監督がイッセー尾形主演で制作した『太陽』(2005年)が評判になったが、さすがに日本史上初…

史上初、昭和天皇主役映画……『皇室と天皇とわが民族』(1960年、日本)